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カスタマー中心のIT:顧客体験を成功に導くための戦略

テクノロジー自体の議論に終始するのではなく、ITエグゼクティブのアーロン・テイラー氏は、コールセンターが受け取る情報をより充実させることや、オムニチャネル・ファーストの考え方を取り入れること、そして自社との取り引きを顧客にとって簡単にすることを重視しています。
テイラー氏は、Vanguardの米国個人投資家部門におけるプリンシパル兼ディビジョナルCIOです。同氏は、これらのポイントに注意を払うことが、自社のITチームが卓越した顧客体験を提供し、企業の差別化と成長を実現するうえで不可欠だと考えています。
「私たちは、クライアントの期待やニーズがどう変化しているか、それにどう応えるか、そしてどう改善していくかなど、クライアント体験に多くの時間を割いています」とテイラー氏は述べます。
こうしたカスタマー中心の考え方は、現代のCIOにとって不可欠です。
「従来のCIOの役割は、テクノロジーと組織のデータ基盤を管理することで、これはもはや最低限の前提条件(テーブルステークス)に過ぎません。今、CIOは事業の成長を支援しなければならず、そのためには収益に一層焦点を当て、結果として顧客と顧客体験にさらに注目する必要があります」と、プロフェッショナルサービス企業KPMGでテクノロジー、メディア、通信業界を担当するコンサルティング業界リーダーのチャド・サイラー氏は言います。
Foundryの「2025 State of the CIO」調査によると、顧客体験(CX)の改善は、AIの研究・導入に次いで、今年のITリーダーにとってのCEO主要課題の第2位に挙げられています。
以下では、優れた顧客体験を実現するために、ITリーダーが活用している主要戦略を紹介します。
1. カスタマー中心の“北極星”を定める
テイラー氏とそのチームが顧客体験のイニシアチブに取り組むとき、まず目指すべき目標が明確にあります。それは「CXアルファ(CX Alpha)」と呼ばれるもので、テイラー氏によれば「顧客がより良い投資家になるようサポートする“アルファ”体験」であり、チームにとっての北極星の役割を果たします。
「アルファ」という名称は、Vanguard Advisor’s Alphaに由来します。これはVanguardがアドバイザーに対して定義しているサービスモデルで、アドバイザーが「信頼を育み、長期的な関係を構築し、持続的かつ成功に導くビジネスを築く」ことを支援するものです。
これに倣い、CXアルファは顧客一人ひとりにとって直感的でパーソナライズされた体験を提供し、顧客が最良の結果を得るためのより良い意思決定を支援し、その結果として企業との関係を深めることを目指しています。
「お客様が私たちとやり取りするときに、デジタルを介して必要な支援を適切なタイミングで行い、目指す財務目標を達成できるようにするにはどうすればいいのか、そこを追求しています」とテイラー氏は補足します。
このような“北極星”を持つことが、カスタマー中心のソリューションを牽引するうえで重要なのです。
2. ビジネスとITチームを融合させる
北極星に沿った顧客体験を構築するために、Vanguardはプロダクトチームモデルを採用しました。8~12名ほどのフルスタックチームで構成され、ソフトウェアエンジニア、ユーザーエクスペリエンスデザイナー、ビジネスのプロダクトマネージャー、必要に応じてデータアナリストなどが含まれます。例えば、口座開設やオンライン投資の自動化など、顧客向けサービスに必要となるあらゆる要素を検討・把握し、組み合わせる役割を担います。
「このプロダクトチームモデルによって、ビジネスとテクノロジーを本当の意味で融合できるようになります」とテイラー氏は言います。こうすることで、チームが顧客体験を開発するときに全体的な視野を持てるのです。
他の専門家も、このプロダクトベースのアプローチを支持しています。
FTI ConsultingでデジタルトランスフォーメーションとAIトランスフォーメーションを率いるシニアマネージングディレクターのスミート・グプタ氏は、ビジネスとITチームを「デジタルスクワッド」や「デジタルプロダクトチーム」という形で融合させることを推奨しています。テイラー氏と同様、グプタ氏はこうした体制が、初期段階から顧客のニーズとビジネス目標の整合を高めると指摘します。
「ビジネスとITの垣根を取り払うことになりますね。このモデルでは両者が同じKPIを共有するからです」とグプタ氏は述べています。
3. カスタマー中心のITカルチャーを築く
KPMGのサイラー氏によると、先進的な企業のCIOはIT部門の中にカスタマー中心の文化を確立しているといいます。
そうした企業では、ITスタッフは「自分の仕事はテクノロジーを扱うこと」ではなく、「テクノロジーを通じて顧客にサービスを提供すること」が本質だと捉えるようになっています。
「そのためにCIOは、それが何を意味するのか、なぜ重要なのか、チームの各メンバーがどう役割を果たすのかを明確に示す必要があります。これがチームに明確性と指針を与え、それぞれが自分の貢献を理解することにつながるのです」とサイラー氏は言います。
シュナイダーエレクトリック(Schneider Electric)では、ITチームが顧客をよりよく理解するために、いくつかのプログラムを導入していると、北米担当シニアバイスプレジデント兼CIOのボビー・ケイン氏は語ります。
そのひとつが「パワーカップルモデル」で、デジタル担当メンバーとビジネス担当メンバーを組み合わせ、エンド・トゥ・エンドのプロセスを協働で取り組む仕組みです。
「これにより、デジタルチームは、実際に顧客が直面している問題や障壁、どんな課題を解消しようとしているのかを最前線で理解できるようになります」とケイン氏は言います。
さらに、ITシニアリーダーを流通パートナーの技術担当リーダーとペアにすることも行っています。
「これによって互いの関係を築き、協力体制を作れるのです。そして直接的なフィードバックを得ることで、彼らが抱える問題をより正確に把握し、解決策を一緒に考えられます。摩擦が生じるポイントを把握し、それを解消するための共同発明に取り組めるようになるのです」とケイン氏は付け加えます。
4. 早い段階から、そして頻繁に協働する
フィットネス、アクアティクス(プール関連)、レクリエーション分野の施設管理サービスを提供するThe Amenity CollectiveのCTO、ステヴァン・フィッカス氏は、顧客体験に関する取り組みを進める際に、ITチームのメンバーを正しいステークホルダーとどう組み合わせるかだけでなく、そのタイミングにも細心の注意を払っています。
「ステークホルダーやユーザーグループと連携する必要性は誰もが理解していますが、多くの場合ITはそれを始めるタイミングが遅すぎます。そこで私たちは、早期に正しいステークホルダーやユーザーを特定し、プロセス全体にわたってしっかり関与してもらうようにしています」と、CTOとしてITを統括するフィッカス氏は言います。
「開発者は『何を作りたいか』をある程度把握しているつもりでも、実際の業務プロセスで彼らより詳しいのはユーザーやステークホルダーです。彼らと対話することで、最初から最適化されたソリューションを提供できるようになります。もちろんリリース後にも継続的に改良を重ねますが、初期段階から関わってもらうことが大事なのです」と同氏は続けます。
同様に、ノースウェスタン・ミューチュアル(Northwestern Mutual)のCDIO(最高デジタル・情報責任者)であるデイヴ・ゴードン氏も、従業員、ファイナンシャルアドバイザー、顧客など、多様なステークホルダーとの協働が、最適な顧客体験を実現するうえで重要だと語ります。
「たとえば、私たちは2万2千人以上のファイナンシャルアドバイザーとそのチームを束ねる重要なフィールド委員会を活用して、ビジネスやプロダクトチームとともに、クライアントが求める機能や期待される体験を特定し、優先順位付けを行っています。
これによって、保険や資産運用など、クライアントのライフステージに合わせた包括的な金融プランニングを実現する独自のデジタルプランニングプラットフォームへの投資が可能になりました。さらに顧客データの品質にも投資し、どのデジタル接点やアドバイザーとのやり取りにおいても、クライアントの情報が一貫して正確に反映されるよう取り組んでいます。」
5. データ環境を改善する
顧客体験の取り組みでは、パーソナライズを高めることがほぼすべてのプロジェクトの最重要目標ですが、多くの企業では顧客一人ひとりの情報が断片化されており、全体像が見えにくい状態だと、デジタルサービス企業West Monroeのパートナーであるカルビン・チェン氏は指摘します。
「多くの場合、組織が持つ顧客体験は、分断されたデータ環境が原因で、プラットフォームごとに顧客を認識できず、顧客がチャンネルをまたいで移動しても連携が取れていないため、ちぐはぐな体験になってしまっています」とチェン氏は説明します。
これを解消する唯一の方法は、CIOが組織のデータ環境を強化し、注文履歴や出荷履歴などの社内データや、SNSなどの社外データを統合できるようにすることです。チェン氏によると、こうした顧客データをあらゆる情報源から収集・統合・管理するために「カスタマーデータプラットフォーム(CDP)」を導入する企業が増えており、それによって顧客ごとの包括的なビューが作られ、顧客が求めるパーソナライズされた体験を提供できるようになります。
6. テックスタックをモダナイズする
課題はデータ環境だけではありません。多くの組織では、顧客が求める体験を提供するために、さらに市場のスピードに対応するためにも、テクノロジースタックを近代化する必要があります。
「顧客体験の向上を加速させたいなら、チームの働き方と、それを支えるテクノロジースタックを組み合わせて最大限に活用しなければなりません」とVanguardのテイラー氏は言います。
テイラー氏はその必要性を実体験で理解しています。かつては適切なスキルと明確な目的を持つチームを組成しても、テクノロジーが足かせとなり、想定より開発が遅れることがありました。
そこでレガシー技術を一掃してITチームのイノベーションと提供スピードを落とさないようにするため、他のイニシアチブにテックモダナイゼーションの取り組みを組み込んできました。その結果、今ではエンジニアリングチームが数分で新機能をリリースできるようになっています。
「この近代化の取り組みによって、より迅速に、より機敏に顧客の要望に応えられるようになりました」とテイラー氏は語ります。
7. AI導入を加速する
West Monroeのチェン氏は、ジェネレーティブAIを活用したチャットボットなど、あらゆる形態の人工知能技術の導入をCIOが加速し、より良い顧客体験を創出すべきだと提言しています。なかでも「エージェンティックAI(agentic AI)」は、効率的かつ効果的な顧客体験を提供する強力なツールとして注目されています。
AIが自律的に意思決定を実行する場合でも、人間の承認が必要な行動だけを実行する場合でも、この技術は人間よりも迅速かつ正確に顧客のニーズに対応できる可能性があるとチェン氏は言います。
同様にサイラー氏も、チャットボットやバーチャルアシスタントなど、顧客のジャーニー全体にわたって自動化やAIを導入することが、顧客の期待が高まるいまの時代には欠かせないと指摘します。
KPMGが発表した「2024 Global Customer Experience Excellence」レポートでも、先進企業はAIインターフェースを“人間味”のあるものにして、より魅力的で親しみやすい体験を提供していると述べています。つまり、人間以外のものに人間らしさを持たせる「アンスロポモーフィズム(擬人化)」を活用し、マイクロソフトのCortanaやAppleのSiriのように、独自の個性や会話スタイルを備えたパーソナライズされた、感情面でも響く体験を生み出しているのです。